えさ

動物園に来た。
お気に入りの動物園。
お気に入りの動物を見に来た。

何て動物かは知らないが気に入っている。
えさを持っていると近寄ってくれる。
えさを持っていなくても近寄ってくれることもある。

今日も来たよ。
えさを持ってきた。
でも今日は近寄ってくれない。
明日はどうかな？
あさってはどうかな？

えさを与えることが僕自身のためだとしたら、もう近寄ってくれないのかもしれない。

 

紙ボール

ノートを1ページ破いた。
たくさん時間をかけて。
たくさんインクを付けて。
真っ赤に塗って。
丸めた。
赤い大きな紙ボール。

僕はそれを明るい場所めがけて力いっぱい投げた。
そしてすぐに返ってきた。
白い小さな紙ボール。

あっちも明るくないのかな。

地図と荷物

僕は立ち止まっている。
そして地図を見ている。
僕が描いた地図。
別に道に迷っているわけじゃない。
予定通りの道を行き、予定通りの方向を向いている。
なのに立ち止まっている。
初めて立ち止まって地図を見ている。
そこが本当に目的地なのか。

僕は立ち止まっている。
そして荷物を見ている。
僕の大事な荷物。
欲しいものはある程度手に入った。
特に失うこともなく、必要なものはすべて持っている。
なのに立ち止まっている。
初めて立ち止まって荷物を見ている。
忘れ物をしていないのか。

僕は気づいた。
ひとつだけ気づいた。
僕は時計を持っていない。